滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
母親の要望でスカイツリーを見た後は浅草でぶらぶらしながら、人気天丼屋で昼ご飯を食べた。
還暦を迎えたとは思えない食べっぷりに驚きながらもたわいもない会話を楽しむ。
父親のことや実家で飼っている老犬のチャロのこと。
集落から離れた町に通る国道に初めてマックが出来たことや、
近所に住む家族ぐるみで仲のいいおばさんが近頃韓流スターにハマった話など、様々だ。
「もう、みっちゃんったらポ様にメロメロでね〜」
楽しそうに話す母親を見るのは久しぶりだった。
去年の正月に実家に一度帰ったきりで、
こうして会って話すのは久々だったからだ。
声は常に電話口から聞こえてくるので懐かしさは感じないものの、
やはり直接話すとついつい顔を見入ってしまう。