滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
あんなに大きかったハンバーガーをペロリと平らげた彼は、
笑いながら頬杖をして私をジッと見つめてきた。
その真っ直ぐな眼差しとぶつかると、私の胸と顔が一瞬でカッと熱くなる。
「俺は魅力的だし、可愛いと思うけど?奈緒子さん」
よくよく考えてみると、
初対面でついさっき会ったばかりの人に名前を呼ばれて、普通なら絶対困惑するはずなのに、
彼に言われると自然と嫌な気分にならなかった。
すんなり違和感なく私の中に入り込んできたのは、
きっと自分の中で、彼のことをいい人だと決めつけているからだろうか。
「…それはそれはどーも」
「あ、流したね?」
「初めて会った人にそんなこと言われてもお世辞にしか聞こえませーん」
急に恥ずかしくなってきて、
赤い顔を隠すように俯きハンバーガーを一口食べる私。