滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
でも内心はいつもの笑顔が見れてホッとしている自分がいる。
何故かわからないけど、
よかったと安心している自分が。
「っくしゅん!」
北風が吹いた瞬間、微かな身震いの後くしゃみをしてしまった私。
髪を切ったせいか、首のあたりがやたらと風を感じて普段よりも体感温度が冷たく感じる。
「駅まで送るよ」
そう言った瞬間、彼は私の手を取ってギュッと握ると自分のジャンパーのポケットにそのまま入れた。
「っあ、ちょっ…」
「これならあったかいでしょ?多少の寒さは乗り切れる」
ふふふとニッコリ笑って話す彼に、
私はそれ以上返せなくて言われる通りに身を委ねることにした。
恥ずかしいけど、くすぐったくて。
この彼が持つ雰囲気と波長がとても心地よくて。
俊介にはなかったモノを彼は持っている。
だから様々なことで感情が揺れ動くのかもしれない。
そう感じずにはいられなかった。