滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
ニッどう笑いかけてくれる笑顔はいつもと同じなのに、
なんだがやけに素っ気ない感じがしたのは気のせいだろうか。
彼は紙袋を持ってそのまま公園を立ち去っていく。
その後ろ姿が何故か遠い場所にいるような胸騒ぎがした私は、
待って!と咄嗟に声をかけてしまった。
「?」
「あっ、別に何でもない…んだけど…、さ」
「ーーあ。そっかそっか、アレ忘れてたな〜」
不思議そうに見つめてきた彼が困り顔の私を見た途端、
何か思い出したかのように再び私の元へ戻ってきた。
そしてーー。
「…お別れのコレが欲しかったんでしょ?」
ちゅっと軽く唇にキスをして意地悪そうにニヤリと笑った。
「〜っっ!」
もちろんキスなんて望んでいたわけじゃない私はみるみる顔を赤くしてしまう。
「物足りないなら、もっと深いのしてあげよっか〜?ホテルで」
「ばっばか!」
はははと愉快そうに笑う彼に、
先程の物寂しい面影は全く感じられなかった。