滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
しかしその勘違いは数日間続いた。
初めはたまたまかな?とか、
同じ方向の人がいるのかなと思うようにしていたが、流石に一週間も同じ状態に遭遇するなんてあまりにも不自然すぎる。
時には帰る時間を早めたり遅めたり、
道順を変えたりと試行錯誤したのだが、やはり後ろから誰かがついて歩いてくる気配は変わらずで、
時には駅前からタクシーで帰る程までになっていた。
「ちょっと…大丈夫なの?」
「もう帰るのが怖くて」
社内にある休憩室。
広々した空間には喫煙所や飲食出来るスペースが設置されている。
あすざに事の真相を話すと、暫くはうちに泊まる?と心配して言ってくれた。
「でも、今アンタ男と同棲してんでしょ?」
「あー、あんなのセフレだから気にしない気にしない!!」
ーー逆に気使うわっ!!
さらりとセフレの存在を笑いながら話す親友に、
はははと苦笑いするしか他なかった。