滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

そんな私と彼のやり取りを離れた場所から周りの人間が横目で見ながらヒソヒソ話。


何も知らずに背を向けたままの私はそそくさと仕事を始める。


しかし彼の視界はしっかりと入ってきたのか、
その時、じゃぁ…。と彼が自分の席に戻り高々と積み重ねられたファイルを持ってきて、
私の机にドスンッと勢いよく置いた。


「何なんですか!このファイリングは!!仕分け出来てない上に、書類の分類もめちゃくちゃじゃないですか!!ほんっと頭悪いですね貴方!!!」



いきなり身に覚えのないファイルを突き出したと思ったら、

今度は根も葉もない事を怒鳴り声で詰め寄ったきたのだ。



「あ、あの部長…」

「夏目さんの為にとわざわざ会議室で開発のノウハウ教えてあげたのに、全く身についてないじゃないですか!!」



彼の怒りの気迫に驚く同僚達が逃げるようにオフィスを去っていく。


私はキョトンとしながらとりあえず彼の謎の言動に身を任せることにした。

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