滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

“奈緒子さんの財布に会社のIDカードが入ってて、色々コネを使ってここに来たってわけ”


“もちろんちゃんと開発について勉強してきたよ?何もできない部長じゃ、簡単に怪しまれちまう”





何気無く話を流していた会話が、
今要約点と点で繋がった。





「じゃ、蒼君は会社とはまったくの無関係な人ってこと?本当に私に会うためだけにうちの部に…!?」

「ま、そーゆーことかな。アメリカじゃ俺はただのフリーターだし?今までの部長ヅラはただの仮面。つーかさ明らかにハタチで部長なんてあり得なくね?今までこなしてきた仕事は俺の影武者がぜーんぶやってくれたってオチ。なわけ」




ははは!と鼻で笑う蒼がまた別の人格に見えた。




だってそんな話信じられるわけないと思った。


たった一人の人間に会う為だけに自分を偽装してまで会社に潜りこんで、仕事の出来る人間を演じてきて。




たしかに蒼の素性に疑問を持つ人間も少なくはなかった。



しかし会社が部長として任命したのだから、
有無を言わずそのまま受け入れるしかなかったのだ。

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