滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

でも…。


「暴力はダメだよ。お互いの間にどんなズレがあったとしても」




蒼が私の為にとしてくれたことは嬉しい。


が、その現場に血が流れるような状況になるのは私としても心苦しい。



「ちゃんと後で俊介に謝った方が…」

「何で?何で俺が謝らなくちゃなんねーの?元はといえばアイツが悪いじゃんかよ」

「そうだけど!…相手を傷つけるのは良くないでしょう?子供同士の喧嘩じゃないんだから」





納得いかない様子で私に噛み付く蒼に宥めながら話を続ける。



しかし蒼も黙ってはいなかった。





「奈緒子さん、どんだけお人好しなんだよ。アイツに散々嫌な思いされて、その挙句怪我の心配するのおかしいだろ!」

「たしかにそうだけど、それとこれは別問題でしょ?」

「何が別問題なの?精神的に酷いことされたのに、アイツの怪我した痛み以上に辛かったのに…!?」





たしかに俊介が第三者を使って私につきまとわせていた事は許し難いことだ。


でもそれ以外は私自身の考え方の問題であって、
直接俊介には関係ないことだ。


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