滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

ブランドなんて持っていなかった私に、彼が初めてくれた大切な品物だった。


今日の今日までずっと大切に使っていたのに、

まさか自分のミスで無くしちゃうなんて…!



「とりあえずフロントに聞いてみよう…!」


たまたまホテルには日本語が出来るスタッフがいたので、
私は急いでフロントに連絡をとった。


その後詳しい事情を話すと、スタッフから直接リバティー島のカフェへ電話で聞いてくれることになった。



そして数分後…。




「そうですか、わざわざありがとうございました」



カフェスタッフの答えは、
財布の忘れ物は届いていない。という返答だった。




中身が全てなくなっていてもいい。

せめて財布だけでも帰ってきて欲しいという期待と願いは、
木っ端微塵に砕かれた。

< 19 / 262 >

この作品をシェア

pagetop