滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

でも簡単には諦めきれない。


私は再びフロントに問い合わせ、リバティー島行きの最終フェリーの時間を聞いが、とっくに時間は過ぎていて、
行くなら朝八時からなら。と返されてしまった。





「…絶望的だわ」


目の前が真っ暗。

同じ型の財布ならブランド店に行けば買える。
だが、そこには何の思い出も価値もない。



あの日、あの瞬間、あの場所でカレからもらったからこそ大事にする意味があるのに。



「もう完全に諦めろってことなのかな?」



こうやって思い出を一つ一つ失っていけば、

思い返すことも未練がましく感じることもないのだろうか。


まさか財布一つ無くなっただけで、
こんなにも自分自身が落胆するなんて…。

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