滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
中年の男性医者から命の安全を聞かされ
、ホッと肩を撫で下ろす私達。
しかしまだ父親の容体は悪いままなので、
このまま救急車で設備のいい大学病院へ運ぶことになった。
それから母親は父親と共に救急車で病院に。
私は二人の着替えを用意するため蒼と共に一旦家に戻ることにした。
空いていたはずの店にシャッターが閉まり、
臨時休業しますと殴り書きされた張り紙がシャッターに貼られている。
私達は自宅に入り、一通りの入院グッズをバックに詰め込んだ。
「…」
ギュッとバックのシャッターを閉めた後、
暫く茫然自失になってしまう私。
ーー大丈夫かな?お父さん。
昔から寡黙だったから、いつも大事なことを言わないでお母さんに怒られちゃうんだよね。
考えたくもないことまで考えてしまう。
命の別状はないってちゃんと言われたのに、
不安がどんどん押し寄せてくる。