滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
もし、もしだよ?
また病院で検査して何か悪いものが見つかったらーー!!
「ーー奈緒子さん!!」
「っ!」
蒼が私の体を軽く揺さぶり最悪な闇の世界から、現実の世界へと引き戻してくれた。
「…」
すぐ近くで心配そうに見守る蒼の目線が私を冷静にしてくれる。
「とりあえず病院行こう?考えるのはそれからだよ」
床に座り込んだままの私をギュッと抱きしめて、優しく頭を撫でてくれる。
「…うん」
ーー安心出来る。
蒼君の体温が私を平常心にしてくれてるんだ…。
蒼を抱き返してほんの少しの間だけ、
その温もりを噛み締めた。
「お母さん」
病院に行き父親が入院している病棟に向かうと、
通路でちょうど医者と話を終えて別れるところに遭遇した。
「あ、奈緒子」
「お父さんなんだって?」
「三日間入院して具合を見るって」