滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

そして彼はソムリエを呼び私にあったワインを選んでくれて、

二人でワイングラスを傾けた。




話をしていくうちに自然と彼への警戒心もなくなっていて、

本当はとても素敵な好青年だと知った。



考え方も大人びていて、五つも年下とは思えない貫禄があった。




財布のこともカレのこともすっかり忘れていた私は要約、

外に広がる雨の夜景をじっくりと眺められる余裕が出来た。



二泊して、最後の三日目でようやく心落ち着きながら出来た食事。



それはひょんなキッカケで出会った彼のおかげかもしれない。



「最後の最後でいい体験させてもらっちゃったな。ありがとう」



笑いながら言うと、こちらこそと言って私のグラスをそっと重ねて、音を鳴らした。

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