滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

さっきまでざわついていた室内がシーンとなり、一気に緊張感が走った。


部下からの視線を物ともせず、

男性は室内に入るやいなや、そのまま部長の席へ向かう。



その後に続く引き継ぎの上司がちょっと仕事の手を止めて。と開発部にいる社員全員に声をかけた。




その言葉に私も一旦やめて、何気なく部長の席を眺めた。








「今日から開発部の部長になる、真壁蒼さんだ」

「真壁です。至らぬところもありますがよろしくお願いします」






「……」




初耳じゃない。


初対面でもない。




頭の中がパニックになって、
頭を下げて挨拶をする彼に皆、席を立って軽くお辞儀するのに、


私だけ椅子に座ったまま驚愕している。


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