滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
ただっぴろい社長室の窓から見下ろす都会の景色。
ギッシリ土地に密集した建物達に、
慢性渋滞が永遠と続く道路。
米粒程の小さな人間達はひっきりなしに動き回っている。
アメリカとはまた違う街の流れは、
日本独特の慌ただしさすら感じさせた。
「ーー三ヶ月だ」
部屋の中心にある大理石のテーブルに、バサッと勢いよく放り投げられた、
紙の束と社外持ち出し禁止と書かれたファイル。
窓辺に立っていた俺はそのままテーブルに近寄り、ペラペラと数枚目を通す。
「開発部には幸い、現時点で長がいない。しかしお前がその席にいられるのは、次の候補が見つかるまでの三ヶ月だけだ」
テーブルを挟むように置かれた牛皮の大きなソファーに勢いよく腰を降ろす男。