花と緋色
夕暮れ時。
一陣の風と共に、人影が現れた。
「……こんな所にいたのですか。探しましたよ。」
「フォルクハルトさん!」
シエリアは人影を呼んだ。
「サイレーンのことですが……風の動きから、昨晩も現れたようです。わたくしがその現場へ向かいました。しかし、戦闘はせず、逃げられてしまいました。」
フォルクハルトは申し訳なさそうに言う。
「唯、彼女はこう言ってました。“血を吸わぬマガイモノの吸血鬼は時が満ちて我等の味方となる”と。」
「まがいもの、か。」
シエリアは自分のことだと察して笑った。
「ちがいない。」
「シエ……」
「でも、私は守りたい人の傍にいる。」
クラウジアに無邪気に笑いかける。
どんな言葉をも飲み込むように明るく笑う少女を夕日が咽む。
「守る為に自分が犠牲になるとか、そこまでは一生懸命になれない。でもね、どんなことがあっても大事なものから離れたくない。守れはしなくっても、いっしょがいいの!」
「……足手纏いになるならば切り捨てる。」
真っ直ぐな言葉にヴォルフラムは、そう言い放ち踵を返す。
「宿へ戻る。手掛かり無しでの夜の探索は不毛だ。」
「あぁ。」
クラウジアは付いて行く。
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