竹林パラドックス
自由席のドアが開くと、中から声がかかりました。


「いらっしゃいませ~、ようこそ天狗屋へ~」

鶏の頭をしたバイト達がいっせいにこちらを見ました。


「お一人様ですか?」

鶏頭のバイトが聞きました。

「一人で悪いですか?」

わたしは不機嫌に聞き返しました。
直後、質問に質問で答えてはいけません、という先生の言葉を思いだし反省しました。


「すみません、寝不足でイライラしていました。一人です」

鶏頭は愛想よく頷くと、席に案内してくれました。


座席の上の荷物棚にずらりと並んだ提灯が、一つだけついたり消えたりしていました。


「相席になりますがヨロシイですか?」

勧められたのは、向かい合った4人掛のシートで、女性が一人ビールを飲んでいました。


「構いません、とりあえずビールください」


わたしが座ると、向かいの女性がにっこりと微笑みました。


「わたし、この居酒屋の常連なんだけど、あなたは一見さんかしら?」


「はい、新幹線に居酒屋が入ってるなんて知りませんでした」


鶏頭が持ってきたビールで、女性と乾杯しました。
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