和田菜月物語
「暇だなぁ~」

私は星を見ながら言った。

そして、
何故か心細くなった。

麻子の話を聞いたからなのか
星を見ているからなのか
それとも…。

あの歌が頭に出てきたからなのか…。

「こんなに君の事好きなのに…。
 君はどうしてあの子しか見てないの?
 私は誰よりも君が好き…。
 それしかあの子に勝てないんだね…。
 でも追い続けるよ。
 あなたが振り向いてくれる事を願って」

私が歌っていると、

「良い歌だな」

と、隣で誰かが言った。

「えっ…?」

私が横を見ると
そこに居たのは亮磨だった。

「何で居るの…?」

「春樹にこれ頼まれたから」

そう言って亮磨は私に袋を渡した。
中にはチョコボールが入っていた。

「何これ…?」

「菜月達がどっか行った後に配られてた」

「あ、ありがとう…」

「それより今の歌って?」

「えっ?」

「今歌ってた歌」

「今の歌は初恋って言うんだ…」

「何でそんな悲しそうなんだ?」

私はビックリした。
どうして亮磨にはそんなに分かるのかが。

「実はこの歌、翔子とよく歌ってたの…」

「だからか…」

「うん…」

「じゃあ俺に歌って!」

「はっ!?」

「どうぞ」

「…。もう!」

そう言いながらも私は歌った。

「春の風が吹く頃に…」

私は恥ずかしくなった。

まるで亮磨に歌ってるようだったから…。
< 119 / 261 >

この作品をシェア

pagetop