パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~
本当の気持ちは自分が一番よく分かっている。
素直になる事が大事なのに、意地を張って自分を追い詰めて。
相手に負けたくなくて。
負けるとか意味のない事なのに。
元々、勝ち負けなんてないのに。


少し、梓と奈桜の役に立てたようで青木はホッとした。


「もう一度、奈桜さんと話し合ってみたらどうですか?」


微笑みながら優しい口調で青木が言う。


「えっ?」


「人間って感情的な生き物ですよねぇ。でもぉ、少し頭を冷やせば大切なものが見えてくる生き物でもあると思うんですよ。その気があれば何も失う物はナイ!」


梓は青木の言葉にハッとした。
穏やかになっていた心臓が、またドクドク速く打ち始める。


「何も失う物はナイ……」


呪文のように小さく呟く。


「そうよね。……ありがとう。青木さん。ごめんなさい……」


『ごめんなさい』は奈桜に向けてだろう。
< 179 / 222 >

この作品をシェア

pagetop