パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~
「梓は……、あいつはいい女優だ。まだまだこれからだ」


うなだれて神川が言う。
こういう言い方しか出来ない。
水無瀬梓は神川にとって一人の『女優』
商売道具のひとつ。
それ以外の気持ちなんてあってはならない。


少し行って奈桜が立ち止まる。


「梓は……」


神川が奈桜をハッと見る。


「梓は最高の女優です。演じることはあいつの天職。女優を辞めたりなんかしません。何があっても」


それは奈桜自身にも言った言葉だった。


「当たり前だ」


遠くなる奈桜の後ろ姿に神川は憎しみさえ覚える。
大切にしていたものが、もう二度と夢見る事さえ出来ない世界へ行ってしまったような気がした。
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