パパはアイドル♪vol.3~奈桜クンの呟き~
とっくに触れてはイケナイものだった。
触れられる位置にいるのに触れられないから辛さが増した。
ずっと心にドカンと大きな石を落として封印して来たのに。


小さくため息をつく。


「オレもまだまだだな」


わざと笑ってみる。
こんな事で取り乱すなんて子供のする事だ。
奈桜になんか関わっているから自分まで幼稚になってしまった。


「失敗だな」


今度はほんとに笑った。
『大人』なのは外見ばかり。
実際は嫉妬に狂ってる醜いオトコ。


梓が奈桜を好きだと知った時から。
振り向いてはくれないと分かった時から。
嫌いになろうと努力した。
嫌いになれないのなら、いっそ嫌われようと決めた。


これが自分の愛し方だと。
離れていても愛している。


そう思っていた。はず。


でも本心はやはりどこかで期待していた。
『いつか……オレを好きになる』


「バカな妄想野郎だな……」


今度はもっと重い石を心に落とした。
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