訳もわからず早川に腕を引かれて連れてこられたのは、駅から少し歩いた所にあるお洒落なバーだった。



「……」



さっきから、全く会話がない。



美月は、ただ黙って早川の歩くペースに合わせるので精一杯だったのだ。




「…ここは?」



「俺のツレがいるんだ。スーツのお詫びに、ご飯一緒に食べてよ」



今まで見たことのない笑顔で、話す早川を見て、美月は一瞬ドキリとする。



『早川さんって、笑うんだ…』


いや、笑わない人はいないか…

ただ、職場ではいつも厳しい顔をしてるイメージがあるからなのか、新鮮に感じる。



この、笑顔を見たことがある人って何人くらいいるんだろうか。


これって、かなり貴重だよね。

目に焼き付けておこう。



早川は、そのままカウンター席の奥に座る。


「橋本さん?隣どーぞ」


なかなか、座ろうとしない美月を見て早川は隣の椅子を軽く引く。




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