書くの神


紙の本を読み漁る私からしたら、携帯小説などという薄っぺらい物語は、軽蔑の対象でしかなかった。

とはいっても、流行りを覗く。

一度、手に取って開いてみた。

「なにこれ?」

最初、子供が書いているのかと思った。

本というものは、文字がひしめき合っているものではないのか?それなのに、この携帯小説というやつは、すっかすか。

しかも。

「横書き?」

縦書き小説にはあるまじき、侮辱。

ひらがなの割合が多く、まるで読書感想文じゃないか。

私は鼻で笑って、軽い本を戻した。

それからというもの、携帯小説コーナーは、私にとってあざ笑いの的となる。

実はこの時、これなら私でも書けるんじゃないの?

少なくとも、これよりはマシだ。

と、原稿用紙に立ち向かったが、日々の忙殺に追われて、マスが埋まることはなかった。

それからさらに数年。

ある著名人が携帯小説を書いた。

物珍しさに惹かれて、サイトに登録をしたのが、すべての始まり。



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