[B L]だからスキって言ったのに



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それから、女子生徒は
《小林君のセンス疑うわ派》と、
《小林君やっぱりかっこいい派》に別れた。



《小林君のセンス疑うわ派》の奴らは、天野に群がっていった。




俺はむしろ、そっちの方が良かった。



女は鬱陶しかったし、五月蝿かったから、いなくなってスッキリだ。


しかし、《小林君やっぱりかっこいい派》の奴らの方が多くて。



うんざりしている。



天野は、あれから話しかけてこないし。




もう、ワケ分からない。



なぜ杏里とキスしたとき天野がダブったのか、とか。




なぜ天野はあのとき視線を逸らしたのか、とか。




もう、すべて分からなかった。





(なに、やってんだ俺…。)





寮のベッドの上で、ボーッと天井を見る。




天野のベッドを見ても、そこに天野はいない。



杏里とキスしてから、天野は俺を避けるようになった。



なんでそんなことをするのかは俺だって理解できない。



だから、あれから俺は天野と喋ってないし、天野が俺のことを『夏音』と呼ぶ声も聞いていない。





天野。





俺は、お前の笑った声や、友達と話してるときの声にも反応して、馬鹿みたいにコーフンしてるよ。





なぁ、天野。







もう一度、その声で『夏音』って呼んでくれよ。





「天野…」





“夏音”







ドクンッ








天野が、俺を呼ぶ声がする。




いや、記憶の中で、な。






“夏音”






ドクンッドクンッ





低い声は、甘くしびれて。





“夏音”





「あ、まの…っ!!」






気付けば俺は、下半身に手を添え、《天野》と言いながらイっていた。





手についた白いソレを、まじまじと見つめる。






「ははっ、俺、サイテーだ…。」







過去は振り返らないんじゃ、なかったかよ。









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