もう一度抱いて
高原に吹く風は柔らかくて、私達の間を優しくすり抜けていく。


ソフトクリームを頬張りながら、私はキョウセイを盗み見ていた。


優しい風が、キョウセイのサラサラな髪を揺らす。


細長い指で透明のスプーンを持ち、ソフトクリームを食べるキョウセイ。


やっぱり食べ方、綺麗だな…なんて。


そんなことを思ってしまう。


「おいしいね~」


京香がキョウセイを見て、ニッコリ笑う。


キョウセイは何も言わず、2、3度頷いた。


隣同士で座る二人が、あまりにお似合いで…。


キョウセイが遠い存在に思えた。


たった数日、話していないだけなのに…。


私はたまらなくなって、視線を落とした。


「里桜ちゃん、乗馬せぇへん?」


うつむいていたら、相原君が急にそんなことを言い出した。


「向こうで出来るらしいねん」


「え、でもちょっと怖い」


「怖ないてー。平気や。スタッフさんが引いてくれるんやし。
え、もしかして里桜ちゃんて運動オンチ?
っぽいよなー。どんくさいもんなー」


「なっ、どんくさいは余計でしょ?」


し、失礼だな、相原君は。


そんなことを思っていたら。


「ねぇ、トモオ君。里桜と相原君って仲が良いね」


京香が急にそんなことを言い放った。


「さっきもソフトクリーム食べさせ合ってたし。もしかして二人って付き合ってるの?」


なに?それ。


なんでそんなこと、キョウセイの前で言うの?


無意識に力が入る指をぐっと握り締めると、急に身体がぐらっと揺れた。
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