もう一度抱いて
「でもね、どうしても気がかりなことがあるの」


「気がかり…?」


机を挟んで向かいのソファに腰掛けた相原君が、きょとんと首を傾げる。


その姿がちょっと可愛いな、なんて思いながら。


「京香と絶交した日、彼女が言ってたの。

“トモオ君は、私とは絶対別れないって言ってくれてる”って」


「はぁ~?なんやそれ?」


私もなんやそれ?と思うよ。


でも確かに京香はそう言った。


すごく。


自信に満ちた顔で。


「そんなんウソなんちゃうん?

ケンカの時は、強がり言うたりするやろ?

絶対て、ありえへんわー」


ケラケラと笑い飛ばす相原君。


私もウソかな…って、ちょっと思ったりもしたけれど。


でも…。


恋人同士のことは、案外周りからはわからないことがあるものだ。


もしかしたら、私には知り得ない深い深い絆が、二人の間にあるのかもしれない。


だとしたら私がその中に入り込むことなんて。


出来ないんじゃないだろうか…。
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