もう一度抱いて
私はスタスタと歩き始めた。


なぜか早歩きになってしまう。


振り返るなんて、出来そうにない。


今、顔を見ちゃったら。


多分、涙腺が崩壊してしまうから。


その時、後ろでザッという足音がして、その直後、ガシッとキョウセイに腕を掴まれた。


その感触に、ドクンと心臓が大きく跳ね上がる。


「永瀬…」


優しい声が耳のすぐ後ろで聞こえる。


掴んだ手が、少し痛い。




「ありがとう…」



キョウセイの声は、ただただ優しくて。


また泣きそうになったけれど。


必死に堪えた。


「…うん」


前を向いたまま、そう答えるのが精一杯だった。
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