もう一度抱いて
涼しそうなキョウセイの顔と、細い身体をじっと見つめてみる。


それだけで、勝手に涙が滲んでしまう。


「頼む…。辞めないでくれ…。

お前じゃないと、ダメだ…」


それは、バンドのメンバーとしての言葉だよね…?


私自身が必要で言っているわけじゃないくせに…!


「キョウセイ…。

私はキョウセイが好きなの。

でも、キョウセイには彼女がいる。

それが、つらくてつらくてたまらないの。

キョウセイを思うだけで胸がつまって歌えないの。

だから無理なの。

もう歌えない…」


「永瀬…」


「キョウセイは忘れてるかもしれないけど、私は覚えてるの。

初めて会った日の公園でのキスも、一緒に行ったホテルでのことも。

全部、全部、覚えてるの。

あの出来事を、私はずっと忘れられないの!」

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