もう一度抱いて
「なぁ、明日金曜だろ?

帰りはそのまま俺の部屋に来るよな?」


「あ…えと、うん」


改めて言われると、なんだか恥ずかしい。


「じゃあ、明日は着替えとか持って大学に来てよ」


「ん。わかった」


「日曜の晩まで、ゆっくり過ごそう」


「うん。楽しみにしてる」


二人で話し込んでいたら、あっと言う間に駅に着いてしまった。


キョウセイと私は帰る方向が反対だから、ここでお別れだ。


「じゃあ、また明日な。
明日はホールのスタジオ取ってあるから。
スタジオで会おう」


「了解。じゃあ、ね」


「おう。気をつけて帰れよ」


手を振り、エスカレーターに乗る。


乗ると、すぐに後ろを振り返った。


キョウセイは前回同様、私の姿が見えなくなるまで、ずっと手を振ってくれていた。
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