もう一度抱いて
やっとの思いで大学の講義室に着くと、一番後ろの席で顔を伏せた。


講義室の窓が全て開いていて、乾いた風が私のクセのある前髪を揺らす。


窓の向こうにある大きな木の葉っぱが、ゆさゆさと揺れる音が聴こえた。


しばらくそうやって顔を伏せていると、誰かが私の肩をトントンと叩いた。


むくっと顔を上げるとそこには、心配そうに私の顔を覗き込む亜美の姿があった。


「ちょっと、里桜。
あんたヒドイ顔してるわよ」


開口一番ヒドイ顔だなんてグサッと来たけど、自分でもわかっていた。


「里桜がそんな顔になってるってことは、京香に何かあったのね?」


私はうなだれるように、うんと答えた。


隣に座って私の背中を優しく撫でる亜美。


「話してくれるわね?」


金に近いショートカットの亜美の髪が眩しいほど綺麗で、なぜだか泣きそうになった。


私は静かに、金曜日に起こった出来事を話した。
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