もう一度抱いて
さすがOLが多いオフィス街なだけあって、カフェも女性客を意識した感じやな。


朝田さんはコーヒーを、俺はココアを注文した。


店の奥の一番目立たへん席で、向かい合わせに座る俺と朝田さん。


彼女は居心地悪いんか、コートを脱いだ後はずっと下を向いとる。


こうして見ると、ほんまに綺麗な人やな。


こんな誰もがうらやむような美人やのに、なんであんなアホなことするんか、俺には理解でけへんことばっかりやけど。


「なぁ」


「なに…?」




「満足?」




俺の問いに、彼女は顔をしかめて俺を睨みつける。


「良かったな。キョウセイ取り戻せて」


俺がそう言うと、彼女はフンという顔をして目を逸らした。


「すごい勇気や思うわ。

別れた彼氏取り戻すのに、そないな手段使うやなんて」


「手段って…?」


不満そうに聞き返す朝田さんと、また視線が絡み合う。


「わかってるくせに…」


フッと鼻から息を吐いた。


「どういう…意味よ…」


彼女に少し、動揺が見られる。


俺はジリと、朝田さんに顔を近づけた。




「わざとやったんやろ?」



ニヤリ冷たく笑えば。


朝田さんは唇と指先が震え始めた。

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