もう一度抱いて
「大成功やったな。

思惑通り、キョウセイは朝田さんのところへ戻った。

さぞ満足やろうな」


彼女は震える手でコーヒーを口にする。


俺は腕を組んで、はぁと息を吐いた。


「アンタはそれでええかもしれへんけど。

あれ以来…。

里桜ちゃんは一切笑わん子になった…。

あんなにいつもニコニコしとった子やのに…」


誰からも愛される、笑顔の可愛い子やったのに…。


「ほんでキョウセイも。

音楽一筋で、音楽無しじゃ生きられへんようなヤツやったのに…。

もう…。

ギターを握らへんようになった…」


俺らが大事にしてきたバンド2TRは。



音も無く、呆気なく。



解散してしまった…。
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