もう一度抱いて
俺の言葉に、彼女の顔が怒りでみるみる赤くなっていく。


「そんなこと、もうしないわ。

この前は失恋して、本当にショックで…」


「ショックで、死にたくなった…?」


彼女は、ぎこちなく頷いた。


「あんなあ…」


「何…?」


「ほんまに死にたい人はな、手首は切らへんねん…」


「……」


「朝田さん、昔からなんやろ?

そういうことすんの。

せやったらわかるやろ?

簡単には死なれへんこと……」


俺がそう言うと、彼女はさっきより唇が震え始めた。


「アンタは最初から、死ぬ気はあらへんかった。

キョウセイを取り戻しとうて、演出したに過ぎんのや…」


注意を引きたいから、やるねん。


愛されたいから、やるねん。


実際、里桜ちゃんかて言うてた。


朝田さんと同じ事したら、キョウセイが戻って来てくれるかなって…。


「もうそないなアホなこと、繰り返したらアカン。

そない大変な思いまでしてそばにおってもろて、何がええねん。

もういい加減、キョウセイ解放したってくれへん?

アイツを里桜ちゃんに返したってくれへん?」
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