もう一度抱いて
しばらく怒りに震えとった朝田さんやったけど、突然長いため息をついた。


強ばっていた顔が幾分柔らかくなった。


「里桜はいいよね…。

そうやっていつも誰かが守ってくれる。

黙ってても、頼まなくても、そうやって誰かが助けてくれる…。

誰からも愛されて…、心配してもらえて…、本当に憎たらしい…」


苦しそうに言葉を紡ぐ朝田さん。


「私が好きになる人は、みんな里桜を好きになる。

今回もそうだった。

またあの子が私から奪うの。

トモオ君は、私と付き合ってたのに…!

許せなかった…。

もう…耐えられなかった…」


せつなそうに朝田さんは話を続ける。


「あの子はいいじゃない。

トモオ君が居なくたって、沢山の友達がいるし、あなたもいる。

でも、私にはトモオ君しかいないの。

たとえ同情だとしても、私にはトモオ君が必要なの…。

そのためなら…、何だってするわ…」


そう言った彼女の瞳に、みるみる涙が溜まっていった。
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