もう一度抱いて
朝田さんは、ハッとしたような顔をした。


「自分のことが好きやない人は、人から好きになられても、相手の気持ちが信じられへんねん。

だって、そうやろ?

こんな自分のどこがええねやろ?って思ってまうからな」


俺もココアを口にした。


すっかり冷とうなっとった。


「せやから、いつか捨てられるんちゃうかっていう恐怖がずっとつきまとう。

どうにかして恋人関係を守ろうとして、必死にエエ女を演じてみたり、言いたいこと我慢して、しんどい思いをせなあかん。

ちょっとでも彼氏が他の女の話でもしようものなら、嫉妬で気が狂いそうになる。

だんだん自分を見失ってまうし、結局相手に愛想尽かされてまうねん。

もうほんま、悪循環やで。

そんなんは全部、自分のこと好きやないとこから来てんねんで」


朝田さんは、長い息を吐いた。


思い当たるフシがあるんやろな…。


「言われてみればそうね…。

里桜は、人の愛情を疑わない。

その自信はどこから来るのかしらってずっと不思議だったけど。

あの子は自分のことを好きなのね…」


朝田さんの言葉に、俺は大きく頷いた。
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