もう一度抱いて
ライブが終わるとすぐに、前期末試験の準備に追われた。


それが終わらないと、私達は夏休みが迎えられない。


バンドのメンバーもみんな試験の準備で忙しいから、あの打ち上げ以来メンバーに会うことはなかった。


そんなある日のお昼時間。


お昼を食べようと大食堂へ向かっている時だった。


横の通路からサッと出て来る、長身で細身の男性を発見した。


その男性は、私の顔を見て足を止める。


「永瀬…」


偶然にも、キョウセイに会ってしまった。


ど、どどどーしよう。


気まずい…。


「今からお昼?」


「…うん」


外は強い日差しで暑いというのに、キョウセイはいつだって涼しい顔だ。


「だったら、一緒に食おう」


え…?と一瞬戸惑ったけれど。


あのままでいるのもイヤだし、私はコクリ頷いた。


食堂に入り、二人で向かい合わせに腰掛ける。


私はライスにチキンと野菜が乗った丼ものを注文し、キョウセイは冷やし中華を注文した。


しばらく無言のまま、食事をする私達。


うぅ…。


一体何を話せばいいのかな?


食事をしながらも、私の頭の中はグルグルと回っていた。


キョウセイはカタンと箸をトレーの上に置くと、私の顔を真っ直ぐに見つめてきた。


その吸い込まれそうな綺麗な瞳に戸惑ってしまう。


「この間はごめん…」


「え…?」


突然あやまられて、目がパチパチしてしまう。


どうしてキョウセイがあやまるの?


悪いのは、突然帰った私なのに…。


「まさか京香がライブに来るなんて思わなかったんだ…」


「え…」


どういう…こと?
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