もう一度抱いて
「それに…」


「え…?」


「永瀬のことを話す京香の口調がな、ところどころトゲがあるんだ。
口では永瀬を褒めていても、どこかけなしてる。
好きだと言いながら、嫌ってる。
俺、そういうのすぐ気づいてしまうから…」


「キョウセイ…」


確かに、キョウセイはすごく鋭い人だ。


歌詞を書いてる時、そう思った。


自分に向き合ってない歌詞は、絶対OKを出してくれなかったもの。


音にも敏感だし、人の声のトーンとかで、その人の本心がわかってしまうのかもしれない。


「ボーカルってな、他の楽器担当に比べて繊細なんだ。

ちょっとしたことで、急に声が出なくなったりする。

だから、メンタル面がすごく大事なんだ。

俺は永瀬に、気持ち良く歌って欲しかったから。

永瀬を揺らすような危険分子は、避けたかったんだ。

だからアイツに、永瀬と一緒にバンドをやってることも、ライブがあることも知らせてなかったんだ…」


うそ…。


そうだったんだ…。


照れるからだって言っていたけど。


本当はそういう理由だったの…?
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