予言と過去



「お前達は龍族の事を どう考えているのだ!? 彼等が悪魔と戦ってくれなければ、今 儂等が此処で こうしている事等 無かった!



彼を この村に置く事で、悪魔が再び襲って来るかも知れんだと? 命の恩人の族の生き残りを、お前達は迫害するのか!



あの子の事を何だと思ってる!? あの子は まだ子供なんだぞ! たった10歳で天涯孤独に なった者の気持ちを、お前達は理解 出来ないのか!」



珍しく声を荒げる大爺様の姿に、村人達は口を噤んだ。



「……まだ反対する者は居るか?」



大爺様の問いに答える者は居ない。



良かった。これでライネスは、私と一緒に暮らせるんだ。



私が、護ってあげなくちゃ。



その日から、ライネスは大聖堂で暮らし始めた。



同じく大聖堂で暮らすリーの隣に個室を貰い、リーが ちょくちょく様子を見てくれていたみたいだけれど、彼は殆ど部屋から出ず、時々 大爺様に呼ばれて大広間に顔を出すだけだった。



私が巫女に なった事に対して、ライネスは特に何も言わなかった。唯、リホは魔法 強かったからなって、4年前とは打って変わって大人びた口調で、呟いただけだった。



巫女である身として、庶民であるライネスとは極力 関わらないようにと司祭様には言われていたけれど、私は1日に1回は彼に会いに行っていた。



家族や仲間を喪ったライネス。彼の心の傷が癒せるのは私だけだと信じていたのに。



彼は もう、大人だった――。

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