予言と過去



翌日。



大聖堂の大広間に、沢山の村人が集められていた。私は巫女の身であるから皆の前に姿は見せられないし、安静に していなければ いけないライネスの傍に付いていようと思ったのに、彼は大広間での話し合いを聞くと言い出して、今は私とリーとライネスの3人で、そっと中の様子を窺っている。



回復(ヒール)を掛けたとは言え、ライネスの躰には生々しい傷が残っており、彼の躰には包帯が ぐるぐる巻きに されている。



ライネスの話によると、彼の他に捕まっていた龍は、皆 殺されてしまったそうだ。その事を、大爺様は皆に伝えた。


「それと、儂はライネスを養子に迎え、大聖堂で暮らさせる事に した。」



大爺様の言葉はライネス自身も初耳だったようで、隣で彼は小さく息を飲んだ。



驚いたのは彼だけではない。村人から、反対の声が沸き上がった。



「何故あんな餓鬼を神聖な大聖堂に住まわせるんだ!」


「そもそも、龍族の生き残りを この村に置いといて大丈夫なのか!? また悪魔が襲って来たら どうする!」


「大体あいつは龍族の役立たずだった筈だろう!?」



酷い暴言に、思わずライネスを見遣る。聞かせては いけないと思った。しかし、彼の横顔を見て、私は何も言えなくなった。



無表情な顔。何を考えているのか、全然 解らない。けれど、何かを悟り、何かを理解したような、そんな顔だった。



4年前とは比べ物に ならない程、大人に見えた。



「静まれっ!!」



村人の暴言に、珍しく大爺様が声を荒げた。大聖堂は一瞬にして静まり返る。

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