予言と過去
家に帰ると、いつも通り お姉ちゃんが駆け寄って来た。
「ライネス、また虐められたの?」
「……うん。」
小さく頷くと、お姉ちゃんは抱き締めてくれる。
「辛かったでしょう? 怖かったでしょう? 守ってあげられなくて御免ね……ライネスは優しいだけなのにね。」
違うよ。
その言葉は、声には ならず、喉の奥で消えた。
僕は、優しいんじゃない。
弱いんだ。
特別 頭が良い訳でも、運動が出来る訳でもない。魔法も弱いし、未だに空も翔べない。
何の取り柄も無くて、平凡より尚 劣っていて。
優しい、なんて、僕には不似合いな言葉。
10歳上の お姉ちゃんは、いつも僕に優しくて。
こんな役立たずの弟で御免ねって。
言いたいんだけれど、きっと言ったら泣いちゃうから。
だから僕は、笑う事しか出来ないんだ……。