予言と過去
「ライネス、いつからだ? いつから こんな事を していた?」
耳元で囁く その声には、俺を責める響き等、少しも混じっていなかった。
「儂が気付いていれば良かったものを。誰にも言えずに、辛かったろう?」
「……リーが……ずっと、傍に居てくれました。」
やっとの事で そう呟くと、大爺様は眉を上げた。
「リーが?」
「はい、いつも、俺を止めてくれて……。」
「そうか、あの子も もう、立派な大人じゃな。」
大爺様は そう言って笑った後、更に俺を強く抱き締めた。
もう、怖いとは感じなかった。
「ライネス、死にたいと思うのならば……復讐の為に生きられないか?」
その言葉に黙って顔を上げると、大爺様は哀しそうな瞳で俺を見下ろした。
「生きて、家族を、仲間を殺した悪魔に、復讐しようとは思えないか?」
心の奥が、すっと冷えた。
この人は、純粋に俺を思ってくれている。歪な形でも良いから生きて欲しいと願っている。
俺が、悪魔を召喚したと言う事実を知らずに。
この人を騙して、俺は生きている。
罪に罪を、重ねて行く。
……もう、これ以上は。
大爺様の瞳を見つめ、しっかりと頷いた。
変わろうと、思った。