予言と過去
ある日、自傷している所を、司祭に見付かった。
俺が死んだって司祭は困らないだろうが、大爺様の養子と言う立場の俺を見殺しに した事が知れたら、自分の地位が危ないと思ったのだろう。
彼は、俺からナイフを取り上げようと した。
何故か唐突に、強い怒りが沸き上がった。
自分でも良く覚えていないが、邪魔を するな! と言う内容を叫びながら、ナイフを振り回し、結果、司祭の腕に深い切り傷を負わせた。
我に返った時には司祭は悲鳴を上げて踞っており、俺は自分が した事に唖然としてナイフを取り落とした。
騒ぎに気付いた他の司祭達が集まって来て、口々に罵られ、突き飛ばされた。
そして怪我を した司祭は医務室へ連れて行かれ、床に落ちたナイフを ぼんやりと見つめて数時間 立ち尽くしていた俺は、部屋から連れ出され、大爺様の所へ連れて行かれた。
大爺様は俺の顔を黙って見つめるだけだった。俺は顔を上げる事が出来ずに、床を見つめていた。
この大聖堂から出て行けと言われたら、俺は どうすれば良いのだろうと、ぼんやり思った。
唐突に大爺様が手を上げ、俺は殴られるのを覚悟して、身を硬くした。
けれど、彼の年老いた両腕は、俺を傷付ける事無く、代わりに俺を抱き締めた。
ヴィル達に傷付けられていた時の記憶がフラッシュバックし、震える俺の痩せた躰を、彼は優しく包み込んでくれた。