禁域―秘密の愛―【完】
「私で、良かったら……」
それで巧が落ち着くなら。少しでも安らぎを感じて、話す事が楽になるなら。
何でも与える覚悟はできている。
けれど、やっぱりどこか恥ずかしくて、下を向いた私に巧が囁いたのは
「誰でもいいわけじゃない。 ………瞳がいい」
そんな甘い言葉を囁き………、私の心臓の鼓動は増した。
こんな時まで、そんな言葉はズルいよ。
巧はそんなことを思った私を、知ってか知らずか微笑した後、話し始めた。
ーーーまずは、俺の過去から聞いてくれ。
巧は静かに呟くようにそう言った。
巧のお母さん、菊谷 瑞歩(きくや みずほ)さんは、かなりの美人で近所ではちょっとした有名人だった。
高校卒業後、大手芸能事務所にスカウトされ、女性ファッション誌の専属モデルオーディションがきっかけでデビュー。
演技にも活躍の場を広げ、人気女優への道を進んで行った。
20代後半に差し掛かった頃、仕事を通して知り合った著名な脚本家と婚約し、まさに幸せの絶頂にいた。