禁域―秘密の愛―【完】
「なっ……」
「綾瀬さん!あなた、優斗に何て事言うのよ!?」
「………今日は、ありがとうございました。これで失礼します」
公衆の面前で、園屋さんを完膚無きまでに怒鳴った私に面食らっている合コンメンバーや、怒り心頭の藤原さんをよそに私はそれだけを言うと、帰路に向かうべく歩き始めた。
駅で、電車をを待っている間………私の目には
「…………っ」
無意識に、涙が溢れてきたーーーー。
巧を忘れる為に、新しい出会いを求めて勇気を振り絞って合コンに行ったのに。
変な男には出会ってしまい、もう少しで遊ばれる所だった。
おまけに…………巧のことを余計に思い出してしまった。
「本当に……最悪だ……」
私はベンチに座り、手で涙を止めるべく顔を覆う。
けれど、それでも悔しかった。
あんな男に出会ってしまった事も、いつまでも巧の事を忘れられない弱い自分の事も悔しかった…………。
だから、涙が止まらなかったーーーー。
「…………本当に、最悪だ」
最悪な…………新しい出会いだ。