禁域―秘密の愛―【完】
「えっ!?」
急に声がし、慌てて振り向いた。
「いつまで、教卓の前に突っ立ってる気だ? 他のやつらは、皆んな席移動してる。
綾瀬だけそこにいると邪魔だ」
「あ………っ」
全く気付かなかった。
新しい席に移動している最中だったんだ。
クラスで席替えをすることになり、緊張しながらクジ引きを引いた。
校庭の全体が見渡せる、1番後ろの窓側の席になったとこまでは良かった。
「ご…………めん、なさい」
けれど今、目の前にいる、桐谷 巧(きりたに たくみ)の隣になった。
………私はついていない。
桐谷君は、今年から同じクラスになった男の子だ。
有名企業、桐谷商事の社長の一人息子。成績は常に学内トップで、運動神経も抜群。
容姿も、そこら辺の芸能人にひけをとらないほど整っている。
180センチ程の高身長。綺麗な面長の顔形。
切れ長の二重の瞳に、高い鼻。厚さは薄いけれどどちらに偏るでもない綺麗な形をした唇。
文字通りの"美少年"。
ここまで言えば、桐谷君は何もかも完璧だけれど………、とてもクールでしかも無愛想。
なので、何を考えているか全く分からない。
そんな彼は、ただでさえ人見知りが激しい私の苦手男子部門ランキングでは、ナンバーワンだった。