禁域―秘密の愛―【完】
そんな桐谷君のファンはとても多い。
けれども彼の性格のためか、多くの女子は遠まきに桐谷君を見つめている。
私なんか、桐谷君と話をするのはこれが初めてだ。 もう6月だというのに。
初の会話でまさか………、"邪魔"と言われるなんて。
教卓の前にずっと立っていた私も確かに悪い、 けど。
やっぱり桐谷君は………、怖い。
「っ、 本当にごめん………!」
私は早く桐谷君から逃げたくて、脱兎のごとくその場から離れた。
そして、新しい席に座る。
………桐谷君が隣にいるから安心したのは、ほんのつかの間だったけれど。
ああ………。もう嫌だ。
ーーー気が重い。
本当に、本当に、桐谷君って………怖い。
「全員席についたな〜! これから1学期が終わるまで、その席だから隣の人と仲良くするように!はい、隣や周りを見渡して挨拶しろよ〜」
何を思ったのか先生はそんなことを言ってきた。
そんなものは、桐谷君が隣にいる時点でシレッと聞き流せばいいはずだ。
けれどそれが出来ないのが、真面目といえば聞こえはいいけれど、人の言う事に思わず従順になる私のような人間だ。