禁域―秘密の愛―【完】


私は、鞄に貴重品だけを入れ、アパートを飛び出した。

前に………優斗さんが言っていたことがある。それは、彼は私のアパートの最寄り駅より5駅ほど先に住んでいると。

もしかしたら、そこに行けば………会えるかもしれない。

そう思った私は、地下鉄に乗ろうとし走り出した。

「っ、はぁ………はぁっ」

自分でもなんて、無鉄砲なことをやっているんだと思う。あんなにも広い駅から、優斗さんを見つけようとしているなんて。

だけど………そうせずにはいられないんだ。

今すぐに会いたい。謝りたい。この気持ちを伝えたい。その一心だった。

他には何も考えていなかった…………。



ーーーーだから



「………えっ……?」

私の最寄り駅の入り口に………立っているその人影を見た時。

もしかしたら幻じゃないか、と思ったんだ………。


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