禁域―秘密の愛―【完】


…………なぜだろう。



なぜ、こんなにも胸がざわつくんだろう?




あの姿…………抱き寄せられた時の腕の心地良さ


私の中で思い浮かぶ、ただ一人の男(ひと)ーーーー。

「………っ」



ううん………そんなはずはない。そんなはずは………。



「瞳………?まだ顔色が悪いな。本当に平気?」

「っ、あ………大丈夫」

私は、急いでその考えを振り切った。
そうだ。あの時は私も意識が朦朧としていて…………正しい判断ができなかったんだ。


だから、きっと………そのせいだ。


「心配だな………。いきなり知らない男が入ってきたからビックリした?」

そう言うと、優斗は私を抱きしめた。
でも、確かにそれはさっきの腕ではなかったーーーー…………。


「悪かった、驚かせて………。彼には、きちんと部屋を確かめるよう言っといたから安心して」

「う、うん………」

私は、戸惑いながらも優斗を抱きしめ返した。その腕は先ほどのものとは違うけれど………私が歩むべき道はこの人。

もう二度と………あんな幻を見てはいけない。




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