禁域―秘密の愛―【完】


「本当に、いい人ね!瞳さんって」

食事を済ませて………お店を出た時のこと。

巧の婚約者………朝香さんはそう私を褒めた。

「…………えっ?」

「だって、あの優斗君がべた惚れで………しかも、口調も雰囲気も凄く柔らかいし。誰にでもきっと優しいんでしょうね。店員さんも瞳さんと接すると安心そうにしてたわ」

「あ…………そうですか?」

確かにそれはよく言われる。

…………でもさすがに今日は様子がぎこちなかったと自分では思ってたけど、朝香さんにとってはそうでもなかったようだ。

「朝香、当たり前の事を言うなよ」

優斗はそう言うと、私の肩を抱き寄せた。

「…………っ」

巧が…………いるのに、こんなこと……
……


でもーーーー



「あ………」

巧は優斗に抱き寄せられた私を見てもなお平然な顔をしている。

そうだった………。巧はもう、私の事なんて忘れたんだ…………。

「瞳は、俺が心から好きになった唯一の女性だ。それはそれは優しくて心の広い良い女に決まってるだろ?朝香の感想は当たり前過ぎて話にならない」

「でたわよ。惚気!優斗君ったら本当に瞳さんにべた惚れね!」



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