禁域―秘密の愛―【完】
巧は、そう苦しげに言うと…………更にギュッと強く私を抱きしめる。
「巧…………」
ーーーー伝わってくる。巧の懐かしい、愛しい体温が伝わってくる…………。
「本当は、思わず抱きしめたよ。あの時も………。ずっと………好きだったお前がいたから。だがあの時…………俺が、どんなに苦しかったか、お前は知らないだろ…………?俺ではなく優斗さんを愛するようになったと知って…………どんなに、苦しかったか。どんなに、この現実を受け入れようともがいたか…………」
「…………っ」
「朝香が言ってただろ?最近は特に仕事部屋にこもるようになったと。あれは…………その結果だ。一心不乱に仕事をすれば、瞳のことを忘れられると思った…………。
そして、俺はこうも思った。瞳が今、優斗さんといて幸せになれるなら、受け入れるしかないと。俺は…………朝香の婚約者で…………決して、瞳を想うことは許されない存在だから。…………そして、瞳も俺の事はもう好きでも何でも無い。もしくは、俺を嫌いにさせればいい。そう自分に言い聞かせた。…………そう思わなければ、やってられなかった」
「…………っ、もしかして……だから、私に自分のことを忘れろと言ったり冷たくあたってたの…………?」
「悪かった………。さっきも、優斗さんのためなんて、嘘だ。瞳だから………あんな風にした。嫌いにさせたいと思っていたのに。だけど、どうしてもお前が風邪をひいたり苦しむ所は見たくなかった…………」
「っ、そんな………」
…………涙が、ポロポロと溢れ出す。巧は…………ずっとずっと私の知らない所で苦しんでいたんだ。
色んな状況の狭間でどうすることもできなくて………苦しんでいたんだ。